新型コロナウイルス感染拡大で、自宅で過ごす時間が増え、「家族の絆」の大切さを改めて思い知った人も多いだろう。だからこそ今、親子で話し合い、兄弟姉妹で考えておきたいことがある。たとえば、「実家の相続」という問題。高齢の親を持つ子供にとっては、「親の介護」や「老人ホーム入居」にも関係してくる問題であり、兄弟姉妹で話し合っておくべきテーマだ。
「実家の相続」において、難しいのは「家」の価値の判断だ。
父が亡くなり、同居していた長男が家を継ぐ。次男と長女は預金2000万円を半分ずつ相続したいと主張している。家には1000万円以上の不動産価値があるから兄にはそれで十分だというが、長男にすれば家は一族のもので、住み続ける以上換金可能な資産ではない。父の介護もしたし、補修にもお金がかかるのに、現金の相続分がないという不満が残る。実家の相続には一定のコストがかかることを考慮する必要がある。
病気で倒れた父親を自宅に引き取って介護し、看取った経験を持つ経済アナリスト・森永卓郎氏が語る。
「相続の話し合いでは、介護の内容や費用の記録と領収証を残しておくことが重要です。私には弟がいますが、マンション住まいをしており、父と同居して介護するのは無理だということで、私が介護を引き受けた。在宅介護で毎月40万円ほどかかったが、忙しくて領収証をとっていなかったから相続の時に立て替えた介護費用を請求することができませんでした」
逆に、親が施設に入所し、誰も住まなくなった実家を処分するなら兄弟姉妹で早めに話し合う必要がある。放置すると建物が劣化して不良債権になってしまう。