家を売却する場合、相続時点で兄弟姉妹の1人の名義にしておいて、業者の見積もりや売却交渉の情報は兄弟姉妹で共有して話し合うのが原則だ。その際、バリアフリーのリフォーム費用など、親のローンが残っていないかを確認する必要がある。
問題はいつ売却するかということだ。手間を考えると相続してから売却したくなるが、「実家を処分するなら生前に売ったほうが得です」と語るのはゆい会計事務所代表の西津陵史・税理士だ。
「相続後の売却にも税制上の控除額はありますが、同じ金額で売れるのであれば、相続税や諸費用その他の税を考えると生前のほうがトータルで得をします」
親の施設入所でかかる費用を考えると、入所と同時に実家を売却してまとまった資金を持っていたほうが安心かもしれない。
1人暮らしの親を施設に入所させて家が空き家になる場合、相続後の売却を選ぶと、入所させる施設先にも注意が必要だ。
「同居している子が家を相続する際に相続税を圧縮できる『小規模宅地等の特例』があります。この特例は、親が要介護認定を受けて特養など老人福祉法などに規定された施設に入所した場合でも適用される。高齢で体が弱ったからといって、要介護認定がないままホームに入所させると相続税が大きくなることがある」(西津氏)
その面でも、それなりの資産価値のある家なら、親を施設に入れる時に、兄弟姉妹で「実家の売却」を話し合うのが得する選択につながる。
実家の相続で揉めない秘訣5
【1】相続にかかるコストを考慮する
【2】実家の名義は兄弟姉妹の1人に統一する
【3】不動産の情報は兄弟姉妹で共有する
【4】親のローンが残っているか確認する
【5】売却するなら親の生前にする
※週刊ポスト2021年1月1・8日号