上場企業の有価証券報告書のなかで、筆頭株主から順に上位10人までが記載される「大株主」。どこか1社の大株主になるだけでも巨額の資金が必要だが、10社以上の企業で大株主欄に名前を連ねる人々がいる。
個人別に株の保有企業数をカウントして作成したのが、別掲の「多株主ランキング」だ。保有企業数22社でトップになったのは、個人投資家・内藤征吾氏。
資産形成・運用のカウンセリングを行なう株式会社ノークリーの代表ファイナンシャルプランナーの松澤健一郎氏が語る。
「1人で10社以上の大株主となった人のほとんどは、巨額の資金を長期投資する『個人投資家』です。なかでも内藤氏は兜町では知る人ぞ知る投資家で、彼が株を大量保有する企業は信頼できると評判になり、『内藤銘柄』として投資基準のひとつになっています」
しかし、松澤氏もランキング上位の人物について「経歴などは分からない」という。
「市場への影響も大きく兜町も大物個人投資家の動向には注目していますが、基本的に表舞台に出てこないので情報が少ないのです」(同前)
株を始めたのは「中学時代」
謎の投資家が集う中、その経歴が知られているのが、18社の大株主で保有金額ランキングでも124位にランクインした個人投資家の五味大輔氏だ。兜町では「カリスマ投資家」として名を馳せる。
「本業を持ちながら投資活動を行なう兼業投資家であることをメディアで明かしています。中学生で株を始め、2010年代に『ミクシィ』や創薬バイオベンチャー『そーせいグループ』の筆頭大株主になったことで一躍有名になりました。
五味氏は『プロとは戦うな』という名言を残しています。巨大ファンドと戦っても勝ち目はないので、“個人でできること”を最大限に生かして勝つという考えです。投資のセオリーとされる『分散投資』ではなく、狙いの銘柄に大量の資金を一気に投入する『集中投資』が彼のスタイルです」(同前)
※週刊ポスト2021年1月15・22日号