「父のクレジットカードを1枚止め損ねただけで、まさかこんな“解約地獄”が待っているとは思いませんでした」──ジャーナリストで映画監督の三上智恵氏は肩を落とし、そう呟いた。
三上氏の父が85歳で亡くなり8か月以上が過ぎても、父が生前に利用していたサービスの支払いと解約に、三上氏ら遺族は今も翻弄されている。
「銀行口座やクレジットカードからの自動引き落としは、本人死亡の連絡をすれば取引が停止されるはずです。ところが父のカードは複数あり、そのうちの1枚を止め損なったせいで、年会費のほか、さまざまなサービスの料金請求が父の死後も続いたのです」(三上氏)
2020年の11月にカード停止の連絡をしたが、「停止には2か月かかる」と言われ、今も月約10万円の支払いが続いているという。
「父はネットを使いこなしていたので、その他の契約も確認して解約するのは大変でした。ネット銀行、動画配信サービス、ケーブルテレビ、インターネットプロバイダーまで、それぞれにアカウントとパスワードがある。電話で解約しようにもなかなか繋がらず、繋がっても『本人確認のため』とたくさんの書類提出を求められました」(同前)
近年、三上氏と同じような目に遭う遺族が増えているという。ネット経由での契約は手軽に申し込める半面、いざ解約となると本人ですら面倒だ。死んだ親の契約を子が解除する場合、手続きの負担は何重にもなってしまう。相続手続カウンセラー協会代表理事の米田貴虎氏が指摘する。
「公共料金や携帯電話・通信、各種カード類など、解約手続きをしなければ死後も料金支払いが継続してしまうものは多い。サービスの契約先は多様で複雑化しているので、亡くなった親が何を契約していたかを全て把握するのは無理でしょう」