コロナ禍の現在、各地のスーパーなどでは、レジ待ちの行列を解消するためセルフレジを導入したり、入店制限を設けたり、人と人との距離を開けて列を作るよう誘導したりと、密を回避するため様々な工夫を行っている。こうした状況下では、店側だけでなく客の協力も不可欠となるが、中には我先にと行列に無理やり入ろうとする迷惑な客もいる。こうした客を罰する法律はないのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
私が勤めるスーパーマーケットは、店が狭いこともあり、混雑時にはレジが大行列になりますが、客のAさんはいつも横入りをしてほかのお客さんとトラブルを起こすので困っています。何度注意しても、すぐに横入りをします。その程度で警察に相談するのもどうかと思い、いつも注意だけで終わっていますが、そうしたトラブルは法律的に罰則があるのでしょうか。度が過ぎる場合、警察に相談した方がよいですか。(千葉県・45才・会社員)
【回答】
軽犯罪法では、公共の場所で、列車の切符や演劇などの催し物の入場券を入手するために並んだ行列に威勢を示して割り込むことは禁じられており、違反すると拘留または科料で処罰されます。「威勢を示して」とは、誰かを脅かすということではなく、例えば暴走族のような格好などをして一般公衆に不安を感じさせることをいいます。しかし、商品購入のために並んでいる行列は保護の対象外ですから、威勢を示して割り込んでもこの法律違反にはなりません。
次に、各自治体では迷惑防止条例が制定されていますが、その中に粗暴行為を禁止する条項があります。その1つとして、多数の人が集まっている公共の場所で、正当な理由がないのに、人を押しのける等して、その結果、その場で混乱を誘発したり助長するような行為は禁じられています。
大勢の人が行列をなして並んでいるのに、列の人を押しのけて混乱させれば迷惑行為ですが、条例で禁じるのは、祭礼または興行その他の娯楽的催物に集まっている場合の迷惑行為であり、商品購入の行列には適用されません。つまり、レジ前の行列割り込みを直接規制する法令はありません。