エスカレーターで歩く人のために、片側に寄って乗る――。そんな「片側空け」は、日常的な光景としてよく見かける。関東では左側、関西では右側に寄り、急いでいる人のために通行スペースを作るのが慣習になっているようだ。だが、そもそもエスカレーターを安全に利用するためには「歩かない」が正しい。
10月26日、全国の鉄道事業者50社局などが共同で、エスカレーター「歩かず立ち止まろう」キャンペーンを実施した。「歩かずに立ち止まろう」「手すりにつかまろう」を呼びかける試みだ。各社は安全考慮のため人々の意識を変えようとしているが、まだまだ「片側空け」の風潮は根深く、モヤモヤしてしまう人たちは多いようだ。
「歩いちゃいけないはずなのに、何で歩く人のために片側に寄らなくてはならないのか」
そう嘆くのは、30代の女性・Aさん(東京都/IT関連企業勤務)。エスカレーターの習慣に違和感を抱くようになったのは、最近の“ある体験”がきっかけだった。
「1人分の幅しかないような狭いエスカレーターに乗っていたら、後ろから女性が接近してきて、『ちょっと急いでいるので通してください』と。私は荷物も持っていたのですが、わずか数メートルでも急がなければならない用事があるのかと思い、身を寄せて通しました。ところがお礼もなく、しかもエスカレーターを降りた後を見ていると、別に走るわけでもない。なんだったのかと、すごくモヤモヤしています」(Aさん)
40代の女性・Bさん(埼玉県/広告代理店勤務)は、小学生1年生の子どもと手をつなぎ、横並びにエスカレーターに乗っていたとき、次のような体験をした。
「ショッピングセンターのエスカレーターで、子どもと横並びで利用していました。一応、後ろを気にしてはいたのですが、急に上がってきたおじさんから、『どけよ! どういう教育しているんだ。マナーくらい教えろ』と怒られてしまいました」(Bさん)