しかし、店が割り込み人物を黙認していると、顧客に不愉快な思いをさせ、店の評判にも影響します。客同士でけんかになり、言い合いで済まなくなって手を出せば暴行罪に、けがをさせると傷害罪になります。そのような恐れがあれば、店や顧客の安全が脅かされているといえます。
そうした事態にならないよう、店内で行列ラインを明瞭にし、店内放送や掲示で、レジ前の整列を求めるなど、顧客の誤解を回避する設備条件を整えたうえで、強引に割り込む人には注意をし、注意を無視する人には商品を売らないなどの姿勢を示すことが必要だと思います。
店は、店内の秩序を維持するため、顧客に常識ある行動を要請でき、従わない場合には退店を命じることもできます。店側の毅然とした姿勢に対して、割り込みをする人物の過激な反応が予想される場合には、警察署の生活安全課にあらかじめ相談するのがよいでしょう。
自治体によって異なりますが、生活安全条例で、事業者には犯罪予防措置を講じるよう努めることを、警察などの行政機関には市民の生活安全の確保に必要な措置をとることを求めている例が多いようです。相談すれば適切な助言や支援を受けられると思います。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年1月21日号