翌8日にはこの流れが続き、急ピッチでの上昇相場に乗り遅れまいとする出遅れ投資家による追随買いが上昇に拍車をかけ、日経平均は遂に28000円の大台乗せに成功して週を終えた。週末大引けの日経平均は648.90円高の28139.03円とだった。
今週の日経平均は、リスクを取りやすい相場環境が続くなか上値を試す展開が予想される。先週は、大型イベントを通過したことで米政治情勢に関する不透明感が後退したほか、経済指標の改善なども市場心理を改善させた。
先週に全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が発表した12月の景況指数は製造業および非製造業ともに市場予想を大きく上回る高い数値を記録した。特に製造業の方は、2018年8月来となる高水準となった。この背景とされる自動車産業の生産状況の逼迫は今後も続くことが予想され、ISM製造業景況指数についてはこの先も高い水準が続くことが見込まれている。
イベント通過に伴う目先の不透明感の後退、好調な経済指標、これらの好条件を背景としたマーケット環境が続くと見込まれる中でも、引き続き株価指数に対する高値警戒感を指摘する声は市場において一定数存在している。しかし、こうした高値警戒感は昨年から長いこと常に意識されてはいるが、日経平均株価はもみ合いながらも、階段上のきれいなレンジ上げのチャートを形成してきている。バブル崩壊後の高値が断続的に更新され続けてきている中、仕掛け的な売りも出しづらいと考えられる。
物色動向としては、継続するワクチン普及に伴う景気回復期待および米国での大型財政政策による景気押し上げ効果から、シクリカル(景気循環)株や出遅れバリュー(割安)株が相対的に優位な展開が想定される。米国でのブルーウェーブシナリオの実現期待から、「大型財政政策の実施・国債増発」による見通しが強まり、先週の間に米長期金利は昨年2月以来となるおよそ1年ぶりに1%を超えてきた。
こうした長期金利の動きを受けて、PER(株価収益率)などのバリュエーション(株価指標)の高いグロース(成長)株やハイテク株は売られるのではとの従来の見立てとは裏腹に、先週のマーケットでは、エムスリー<2413>といったグロース株のほか、東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>といった半導体関連株から、村田製作所<6981>やTDK<6762>などの電子部品株までハイテク株が幅広く大幅高となった。
これらハイテク株については、株価指標に基づけばグロース株とはいえ、次世代通信規格「5G」や電気自動車(EV)の普及といったテーマ的な側面に加えて、バリュー株が有することの多いシクリカル的な側面も併せ持っていることが株価上昇の背景にあると考えられる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が近いうちに金利抑制に動いてくることを考慮すれば、このままスルスルと金利が上昇し続けていくことは考えにくく、そうした点を市場が見越していることもグロース株高の背景にはあるのかもしれない。
とはいえ、米長期金利の1%超えは一つの節目と意識されやすく、仮に、この先も1%台半ばにかけて上昇し続ける動きがみられれば、シクリカル的な側面を持つ銘柄はまだしも、そうではないグロース株はやや上値の重い展開が想定される。昨年末のクリスマス休暇からしばらく存在感が薄れていた海外投資家も、米政治イベントを通過したことで再び動き出しているようだ。
先週末の日経平均株価の大幅高は、これら海外投資家が主導した買いに乗り遅れまいとする国内機関投資家や個人投資家などが追随買いを入れたことが背景と指摘されている。海外投資家などは先んじて流動性の高い大型株を好んで買い入れる傾向があるため、こうした点からも、相対的な観点から出遅れバリュー株やバリュー寄りのシクリカル(景気循環)株がグロース株に対してアウトパフォームしやすい環境が短期的には続くと予想される。
そのほか、今週は、国内でファーストリテイリング<9983>やセブン&アイ・ホールディングス<3382>をはじめとした小売企業の決算発表が相次ぐ。新型コロナウイルスが再拡大し、緊急事態宣言も再発令された足元の状況下を踏まえても、内需企業の決算内容や経営陣からの見通しに関する発言を見極めたい。また、景気循環株の先行きを占う先行指標的な役割を担う安川電機<6506>の決算発表のほか、経済指標でも12月工作機械受注などの重要統計の発表が控えている。これらの内容が良ければ、FA関連をはじめとした機械セクターなど景気循環株の上昇に一層の弾みがつく可能性があろう。
主な国内経済スケジュールは、12日に、12月景気ウォッチャー調査、13日に、12月マネーストック、12月工作機械受注、14日に、11月機械受注(内閣府発表)などが予定されている。一方、米国では、13日に、米12月消費者物価指数、米12月財政収支、14日に、米新規失業保険申請件数、15日に、米12月小売売上高、米12月生産者物価指数、米1月ニューヨーク連銀景気指数、米12月鉱工業生産、米1月ミシガン大学消費者信頼感指数などが予定されている。