夫が不貞を働いたことが明らかになったとき、妻はどうするか──。離婚に向かうケースもあるだろうが、妻が専業主婦の場合、経済的な理由もあって、簡単に離婚できないということもある。中には離婚をせずに、生活費をもらいながら別居したいと考える妻もいるかもしれない。実際に、こういったことは可能なのだろうか。弁護士の竹下正己氏が、相談に回答する形で解説する。
【相談】
夫の浮気が発覚しました。同窓会で再会した同級生と2年近く不倫をしていました。夫は相手と別れ、私に謝ってきましたが、私は夫を許すことができません。しかし、今後の生活を考えると、離婚はしたくありません。いままで通りに生活費をもらいながら、夫と別居をするために裁判を起こすことはできるのでしょうか。教えてください。(埼玉県・55才・主婦)
【回答】
民法では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。夫婦の同居義務は多分に倫理的、道義的な要素を含みますが、法律上の実体的権利義務であることは否定できないとされています。ですから、離婚しないで、つまり夫婦の身分を維持しながら、別居だけを求めることはできません。
通常、この同居義務が問題になるのは、一方が家を出て、残された配偶者が同居を求めて家庭裁判所に調停を申し立てたり、同居審判を求めるというケースです。しかし、そうした件で、同居義務があるから必ず同居が命じられるかといえばそうでもありません。そもそも夫婦関係が元に戻れないほど破綻していれば、同居義務はなくなるので、同居を命じることはありません。
そうした極端な場合以外は、同居の時期、場所、態様について法律では基準を定めていないので、家庭裁判所が後見的立場から、同居のあり方を定めることができると考えられます。