しかし、急伸した14日こそ先物の売買高も膨らんだが、市場では、「出遅れ感を意識した海外機関投資家からの現物買いが急速に増えている」といった声も聞かれるように、大勢は現物株主導の相場展開が続いている。先物と違って期限のない現物株をすぐに売るとは考えにくく、下げた場合でも全体は底堅く推移しそうだ。そのほか、「売りものが少ない分、小規模の買いでも値幅が出やすく、売買動向に過熱感があるわけではない」といった指摘も聞かれており、指数から感じられるほどには全体に過熱感があるわけではないようだ。
こうした中、20日には米国で大統領就任式が行われる。先日は、暴徒が連邦議会に襲撃するなど過激な動きがみられており、20日も厳重な警戒が敷かれるとはいえ、こうした暴動による政局混乱が警戒される。足元のマーケットはこうした政治動向には見向きもしていないようだが、ほぼ一本調子で上昇してきている指数が、こうした目に見えるイベントを一つのきっかけに一時的な調整を挟む可能性もあるだろう。
ただし、大勢は大規模金融緩和による過剰流動性相場が株高を演出する構図に変化はなく、14日のパウエルFRB議長による「緩和政策の出口議論は時期尚早」との発言がこれを強化した面もある。また、買い遅れた投資家も依然として多いようすで、下げたところではこれらの投資家による押し目買いが下支えしよう。日米での主要企業の決算発表が1月後半から控えていることもあり様子ムードが台頭しやすいだろうが、決算発表一巡後には再度上値追いの展開となる可能性にも期待したい。
一方、米国市場では、電気自動車大手のテスラモーターズが「合理的なバブル」という言葉では正当化できないほどに上昇し続けており、給付金で潤った知識の浅い多数の個人投資家がこうした「一部の」バブルを創出している点はやや気掛かりだ。個人投資家の人気銘柄筆頭であるテスラ株が何らかのきっかけで下落した時の個人投資家のパニック売りの波及など、FRBによる金融緩和政策の出口議論とは別のきっかけが株式相場の調整につながるテールリスクなども意識する必要は常にありそうだ。
しかし、基本的に今は過度な悲観に傾くよりは強気で臨む局面と捉えていくべきだろう。そのほか、20日からは日銀金融政策決定会合、21日には欧州中央銀行(ECB)定例理事会が予定されている。黒田日銀総裁やラガルド総裁からの発言も注目で、緩和的な内容であれば株高相場の足固めにつながろう。
半導体受託製造で世界最大手の台湾TSMCが14日に発表した20年10-12月業績は、売上高および純利益ともに四半期として過去最高となった。これを受けて同日の米国市場ではアプライドマテリアルズやラムリサーチなどの半導体株が大幅に上昇し、翌15日の東京市場でも同様の動きがみられた。5G基地局からデータセンター、最先端PCやスマホのほか電気自動車(EV)の普及などで半導体の活躍場は広がっており、世界的に自動車生産の縮小が余儀なくされるほどだ。
こうした構造的な長期成長背景に加えて需給ひっ迫という短期的な要因も相まって、半導体業界は「スーパーサイクル」入りが今まで以上に濃厚となった。「グローバルな投資家が、世界の半導体株をまとめて買い上げる動きが出ている」という声も聞かれるように、半導体株の強い基調は続きそうだ。そのため、全体に連れ安して一時的に下げるような場面では押し目買いが有効となろう。
一方、東京市場では、自動車生産の縮小報道を受けて輸送用機器のほか鉄鋼などの関連セクターはやや軟調に推移している。足元の株高演出の主役であるハイテク株だけでなく、こうしたセクターにも改めて買いが入って循環物色が進めば、相場の底上げにつながり、日経平均は更なる株高局面へと向かっていくことになるだろう。
今週の主な国内スケジュールは、18日に11月鉱工業生産(確報)、20日に日銀金融政策決定会合(21日まで)、21日に黒田日銀総裁会見、12月貿易収支、22日に12月全国消費者物価指数などが予定されている。
一方、海外では、18日に中国10-12月期 GDP、中国12月鉱工業生産、中国12月小売売上高、20日に米大統領選就任式、米1月NAHB住宅市場指数、21日に欧ECB定例理事会、米12月住宅着工件数、米1月フィラデルフィア連銀景況指数、22日に米12月中古住宅販売などが予定されている。