主要な輸出先である日米欧などの先進国が未曽有の景気後退に陥る中で、なぜ中国製品は売れるのだろうか。この点については、12月16日の記事〈中国の単月輸出額が過去最高を記録 欧米向けに伸び続ける背景〉でも紹介した。ここでは本質的な点だけを指摘しておくと、中国企業、特に小回りの利く民営企業が、タイムリーに、需要の変化に対応したからである。
中国の輸出入管理及び税関事務を司る海関総署の報道官の説明によれば、2020年におけるマスクを含む紡織品、医療機器、薬品の合計額は前年と比べ31%増加、全体の輸出の伸びを1.9ポイント押し上げたそうだ。
オンラインでの注文が爆発的に増加
これらの製品の需要急増に対して、生産現場は一体どうやって対応したのだろうか。広東省東莞市の包装材料メーカー幹部の話によれば(21世紀報道、1月14日)、それまで持ち帰り用弁当の箱を作っていたのだが、4月の時点で海外からの受注が激減、企業存亡の危機に立たされた。そこで、急遽、防ウイルス用フェイスシールドの生産を始めたところ、これが当たり、危機を脱出、現在では輸出額の4割を占めるまで成長したそうだ。
コロナ禍が始まった当初、マスクに関して、輸出された製品に粗悪品が多いといった批判を世界各国から受けたが、商務部、海関総署、薬品監督管理局は連名で3月31日、品質管理に関する重要な公告を発表、輸出製品の品質に関して厳重なチェックを行った。多くの事業家が機転を利かせ、当局がそれを監督管理の立場から支えたことで、ピンチをチャンスに変えることができた。
中国が輸出を急増させた製品について、もう少し例をあげると、ノートパソコン、タブレット、家電の輸出額は合計で22.1%増加した。これは全体の輸出を1.3ポイント押し上げた。
販売方法では、オンラインでの注文が爆発的に増えた。アリババ系の海外向けオンラインショッピングプラットフォームのAliExpressでは昨年9月、大型家具の販売額は前年同月比で3倍増となった。欧州向けの家庭内オフィス用椅子は5倍増、ソファーは2倍増、室内照明は50%増、紫外線殺菌灯は2倍弱の増加となった。
フランス向けでは家庭内で野菜を育てるためのLED照明が129%増となった。オーブンが50%増、コーヒーメーカーが150%増、DIYブームが起こり木工用電動のこぎりが258%増となった。