今週の日経平均は引き続き軟調な展開が予想される。主力企業の10-12月期決算が最中でもあるため、週を通じて引き続き決算発表を受けた個別株物色が主体となるだろう。ただ、全体としては、先週末の流れを引き継ぐ形で、ボラティリティーの高まりを警戒するムードが継続し、日経平均など指数はやや軟調となりそうだ。
まず、やはり何といっても投機的取引の過熱感が拭えない米株市場の動向が気がかりだ。もともと、オプション絡みの取引も相まった結果ではあるが、米国のテスラ株が「合理的バブル」という言葉ですら正当化できないほどに上昇し続けていたことは以前から懸念材料だった。直近ではこれに加えて、SNSで結集した素人個人投資家がゲームストップ株を買い上げ、ヘッジファンドが救済資金を受け取る事態に陥るなど、米国では過熱的な取引が目立つケースが一層増えてきている。
バイデン政権や証券取引委員会(SEC)も状況を注視しているというが、とりわけコロナ禍中の投機的な動きに急進左派勢力などがどのような反応を示すかが気になる。上述したようにVIX指数も急騰しており、警戒ムードは続いている。こうした指標をもとに株式の組み入れ比率を機械的に決めているファンドもあるだけに、ボラティリティーの高止まりには警戒が必要だ。
また、他方で、中国人民銀行(中央銀行)の短期金融市場での公開市場操作(オペ)において差し引き資金吸収超となり、金融政策委員会の馬駿委員が「中国は年間経済成長目標の設定をやめ、雇用安定とインフレコントロールを主要なマクロ経済政策目標にすべき」との考えを示したなどとも伝わっている。中国は米国のトランプ前政権と関税引き上げによるいわば「がまん合戦」を繰り広げていた。
しかし、そのトランプ前大統領は退任。また、中国はというと欧米各国との比較で新型コロナウイルスの感染拡大を抑制しており、馬駿委員の発言からも窺えるように「株高による内需刺激」から「インフレ懸念対策」に舵を切った可能性がある。米中当局の動きには注意を払っておく必要があるだろう。
一方、リスク回避の機運が高まる中でも、まだ総悲観とまでには至っていないようだ。週末のムードが悪い中でも、HOYA<7741>、富士通<6702>、富士電機<6504>、新光電気工業<6967>などは好決算が素直に好感された。また、半導体関連株が大きく売りに押される中でも太陽誘電<6976>やイビデン<4062>などは高値圏をキープして堅調な動きを見せ続けた。
そのほか、それまで好調だった銘柄が売られる一方で、出遅れ感のあった小売株や、ディフェンシブ性のある食料品や医薬品株が週末には買われた。まだ資金循環が利いている様子でマーケットから「カネ」が大きく流出しているわけではないようだ。しかし、上述したようにムードが変わってきているため、大勢強気保持のこれまでの姿勢からは少し後退して警戒した方がよいタイミングにきているといえよう。
上述したように、それまで好調だった銘柄が売られる一方で、出遅れ感のあった小売株や、ディフェンシブ性のある食料品や医薬品株が週末には買われていた。警戒ムードが強いままであれば、これら銘柄へ逃避資金が流入し続ける可能性があろう。
高島屋<8233>や三越伊勢丹<3099>などの百貨店銘柄はさすがに地合いの悪化を受けて週末には売られていたが、それでも日足チャートではトレンドが継続している。また、吉野家HD<9861>を筆頭にトリドール<3397>、くら寿司<2695>などの外食銘柄も意外と底堅い。そのほか、味の素<2802>やハウス食品グループ本社<2810>など食料品銘柄もしっかり。
米株市場の動向と地合いの変化を確認しつつ、物色セクターの見極めが大事な一週間となりそうだ。そのほか、連日にわたって主力企業の決算発表があるため、これらにも注目だ。地合いが変化してきているため、内容が素直に好感されるか難しく、株価の反応には要注目だろう。
今週の主な国内スケジュールは、2月1日に1月新車販売台数、2日に1月マネタリーベース、5日に12月家計調査、12月景気動向指数などが予定されている。一方、主に米国など海外では、1日に中国1月財新製造業PMI、米12月建設支出、米1月ISM製造業景況指数、3日に米1月ADP全米雇用リポート、米1月ISM非製造業景況指数、4日に米12月製造業受注、5日に米1月雇用統計、米12月貿易収支などが予定されている。