異変が起きたのは今年初めのことだった。コロナ拡大の余波で、B店が閉店を発表したのだ。B店の利用者の多くは、A店かC店への乗り換えを迫られることになった。太田さんは地元の事情を話す。
「A店とB店はどちらも駅前で、場所が100メートル離れているかどうか、というくらい近いんです。そしてC店は、ちょっと離れたところにあって、規模も小さい。これまでは3つの店舗のターゲットが異なっていたため、棲み分けができていましたが、もともとB店にいた人が選ぶなら、近いし24時間営業だし大きなお風呂もあるしということで、断然A店ということになります」(太田さん、以下「」内同)
B店を利用していた多くの人が、太田さんが通っているA店に大量に押し寄せてきた。普段は見ないようなトレーニング“ガチ勢”を見た太田さんは、「私たちとの姿勢の差があまりにすごい。それに見た目もやる気満々で、ちょっと怖いんです……」と未知との遭遇を語る。
B店の閉店発表で利用者が増えたのを好機と捉えたのか、A店は新規会員のさらなる獲得を目的に、割引キャンペーンを開始した。通常料金の半分以下で、2か月利用できるというもの。ありがちな「入会後半年在籍しなくてはならない」といった在籍条件もないため、とりあえず2か月やってみよう、と思う人は少なくない。
太田さんは、「苦境なのはわかるけど、あからさますぎ」と不満気だ。これでA店の利用者の増加に拍車がかかり、さらなる混乱を招くことになる。
「昨年の1回目の緊急事態宣言発令以降、スタジオは密を避けるために、人数制限がかかるようになりました。開始30分前から整理券を配るというシステムですが、新規利用者があふれて、既存利用者が整理券を取れなくなったんです。結局入り口の外まで大行列で、密になっているし、1時間並んでも整理券をもらえないということもザラ。Bから来た人たちは、集団で押し寄せて、目的のプログラムの整理券を交換し合うみたいなこともしている。完全に荒らしです……」
整理券配布時の過密状態への対策として、スタジオプラグラムはウェブ予約に変更される予定だという。だが、それも太田さんを苦しめることになる。どういうことか。