シロガネーゼに麻布妻……。東京都・港区は所得水準の高い地域だけに、そこに住む主婦たちが富裕層妻のイメージで語られることも少なくない。そんな彼女たちは、港区の「外」に出ると、どんな存在なのか。近所に引っ越してきた「元・港区妻」との出会いについて語る埼玉在住の30代主婦に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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「苦手なタイプの人が越してきた……。私の中ではその印象しかないです」。埼玉県在住の専業主婦、坂田綾乃さん(仮名・32歳)は、最近ある場所から近所に引っ越してきたママ友の言動に心がかき乱されているという。坂田さんは現在、同い年の夫と2歳の娘の3人暮らしである。
坂田さん一家の住む地域は、都心から1時間ほど離れた自然豊かな落ち着いた住宅街。子育てするのに良い環境だと思い、3年前に新築一戸建てを購入した。
子供が生まれてからは地元の児童館へよく通っているという坂田さん。足を運ぶと、いつも同じママたちがいるという。食事の献立や芸能ニュースなどを雑談程度に楽しむ距離感に居心地の良さを感じていたのだが、ある日を境に状況が大きく変わったそうだ。
「『初めて利用するんですけど……』と、40代くらいの、高級腕時計が眩しいオシャレなママに話しかけられたんです。名前は玲子さん(仮名)。プチプラファッションのママばかりの児童館ですので、とても目立つ存在でした。
社交的な性格の方なようで、玲子さんのほうから『お子さん、同じ学年かもしれないです! うちの子も女の子!』と声をかけてくれました。終始ニコニコ、悪い気はしませんでした」(坂田さん、以下同)
後でわかったことだが、玲子さんの夫の実家は近所でも知られる地元の名士だった。玲子さん一家は港区に住んでいたが、夫の実家の敷地に一戸建てを新築したので引っ越してきたという。児童館ではママ友同士、いつものように他愛のない会話をしていたが、そのうち玲子さんの本音が見え始めたと坂田さんは言う。
「『越してきて驚いたのは、お野菜のお値段! 港区のお野菜はとにかくお高いの! 人参1袋100円に感動~!』なんて言ってました。この地域のことを持ち上げているようで、若干見下している空気が伝わってきました」