新型コロナの日本の死者数が欧米に比べて少ないことについて、麻生太郎財務相が「民度が違う」と発言し話題となるなど、度々聞かれる「民度」という言葉。教育水準や行動様式などの成熟度を指すとされるが、学歴や年収などと密接に関係することもあり、表立って議論されるケースは少ない。だが、不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティングを行うスタイルアクト株式会社代表取締役の沖有人氏は、「日本社会の様々なところに民度は表れている」と指摘する。以下、沖氏が住む場所と民度の関係について解説する。
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かつて「一億総中流」という意識が存在していたように、日本社会は他者との「同質化」や「同調圧力」の度合いが強く、「ムラ社会」的な相互監視作用が強く働いているように思う。この同質化により、ライフスタイルやモラル、価値観などのいわゆる「民度」が同じであることで人は心地良さを感じるため、おのずと似たような民度の人々が人間関係を結びがちだ。
だが、平たく言うと、ライフスタイルは年収、モラルは生まれ育った家庭環境、価値観は学歴などで区分される傾向が強く、「一人ひとりが平等」という建前から、民度について表立って議論されるケースは少ない。いわゆるタブーのようなものだ。民度は職場などのパブリックな場所ではそれほど問題にはされず、あくまでプライベートの場でその違いが垣間見えるケースが多い。
身近なところで言えば、「夫婦」はその最たるものだろう。人生で最も長い時間を一緒に過ごす夫婦は、友人関係以上に“民度の近さ”を求める傾向があるのではないか。その証拠として、夫婦間で似たような学歴になるケースが増えている。国立社会保障・人口問題研究所(第13回出生動向基本調査・2005年)によると、最終学歴が中学校卒の男性が大学卒の女性と結婚する確率は1%にも満たない。これは女性にも当てはまり、中学校卒の女性が大学卒の男性と結婚する確率も同じく1%以下だ。高校・専修学校・短大・高専をひとまとめにして、これらを卒業した夫の妻は88%同じ学歴である。また、夫が大学卒の場合、妻が大学卒の確率は40%で、妻が大学卒の場合の夫の大学卒割合は79%に及ぶ。
これは2000年以降の統計のため男女雇用機会均等法の影響を受けているが、それ以前も傾向はほぼ変わっていない。夫婦間の学歴の差が結婚に発展しにくい現状はあからさまにあると言わざるを得ない。また、夫婦間の学歴の同質化は子どもへの教育にも表れる。親の大学卒の割合と子どもの国立・私立大学への進学率は相関する。親は自分が辿った道を子どもに歩ませようとするのだ。