長引く自粛生活。リモートワークで日中も家にいながら、家事も手伝わない夫の態度に妻たちが漏らすため息が、あちこちから聞こえてくる。
《あなたは元気で時間もいっぱいある。だからこれからお昼ご飯は自分で用意し、使ったものは洗ってください》
『定年ちいぱっぱ 二人はツライよ』(毎日新聞出版)の著者でエッセイストの小川有里さんは夫が定年を迎えた翌日、こんな言葉をかけた。
「何より肝心なのが、“引導を渡す”こと。怒ったり不機嫌になったりする必要はありませんが、毅然とした態度で有無を言わせず、先に宣言してしまうこと。夫婦に以心伝心はありません。それまで家事をしなかった夫が、急にこちらの気持ちを察して手伝ってくれることはまずありえない。だからその日からはたとえ夫がカップ麺をすすっていても、心を鬼にして絶対に昼食は作りませんでした」(小川さん)
それから20年、小川家では「お昼はそれぞれ」が定着し、夫の食事に拘束されることもなくなった。ただし、分担を宣言した後は手取り足取り教えることも大事だと小川さんが言い添える。
「『わからないことがあったら教えます』と伝え、お湯の沸かし方からきちんと説明しました。当初は1人分のインスタントラーメンを作るのにも大鍋を出してきて、やれやれと思いましたが、やさしく根気よく教え続けました」
定年後の夫婦関係に詳しい臨床心理士の西澤寿樹さんも「相手を尊重するポーズは忘れてはならない」と声をそろえる。
「心理学的な視点から考えても男性に家事を促す場合、ダメ出しはせず、なるべくおだててほめる方がうまくいきやすい。
たとえば朝食の片づけなどは、妻からすればできて当然でしょうが、そこはグッとこらえ、『よその旦那さんは何もしないのに、あなたはすごい』『ちゃんとできている』などと持ち上げる方がいい。
会社という競争社会の中に身を置き、仕事をしてきた男性は順位が他人より上であるとか、目標が達成できたことをほめられると喜びを感じやすい。やったことに対してこまめに反応し、モチベーションを引き出しましょう」
※女性セブン2021年2月18・25日号