59円バーガー×2個(118円)+麦茶代(約30円)で、1食約150円。30日だと4500円。残りの2万1500円を使い、単純計算で平均700円の食費を30回分捻出できる計算です。ただ、途中からハンバーガーには自家製トッピング用のレタスやピクルスを買うようになりましたし、時にはクノールカップスープやポテトチップスなどもつけて豪華にします。となれば、残りの食費代に想定していた平均700円まではいかなくとも、平均550円ぐらいは使える。
あとは、私は当時無職で暇だったものですから、営業途中の友人や転職に悩む友人らが、頻繁に私のアパートを訪れていました。その時、彼らは2時間ほどガ~ッと言いたいことを言いまくり、「あぁ、スッキリした! ありがとう!」と帰っていったのですが、毎度私の家を訪れる度に「中川さんは食べるのに困ってるよね」とレトルトカレーやらパックご飯、ビールなどを持ってきてくれるのです。
この時、「1か月は9万円あればなんとかなる」という感覚を持ったのと同時に、「同世代よりも惨めで貧乏くさい生活をしていると、親切な人は自分に恵んでくれる!」という、ちょっと情けない確信も生まれました。
これに対しては感謝しつつも、「まぁ、自分と同格の人間に彼らは悩みを言ったり愚痴ることはできないんだろうなぁ……。自分よりも明らかに下の立場の無職の私だからこそ言えることがあるんだよな」ということも理解しました。
その時の年齢やその人の性格にもよると思いますが、一旦惨めな貧乏暮らしになった場合は、その窮状は周囲にアピールした方がいいと思います。その方が助けてもらえるかもしれませんし、自分よりも惨めな人の生活を見て「私はまだイケてる」と思う人にとっては重宝される存在になるかもしれません。
というわけで、「都心で1か月9万円生活」はやろうと思えばなんとかなると思います。自分を助けてくれる知り合いが多いに越したことはありませんが。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。