コロナの感染拡大により、不動産バブルは崩壊の危機に瀕しているようだ。不動産ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。
「日本の社会構造は激変している。リモートワークの普及によるオフィスの縮小や、顧客が減ったテナントの撤退などが進み、都心のビルの空き室率が上昇して、賃料が下落しています。また個人所得の減少で不動産需要が減る一方、住宅ローンの返済が困難になり、マンションの投げ売りが始まる可能性がある。この先、不動産価格の下降傾向は避けられないとみています」
巨大不動産を保有して事業を展開する大手企業は多数あるが、これまで安定収益をもたらし、ステータスにもなっていた「不動産」と企業の関係はどう変わっていくのか。
不動産大手は「本業」なので当然、多くの土地・建物を保有する。三菱地所は丸の内などのオフィスビル、三井不動産は再開発や商業施設などに強みを持つことで知られる。住友不動産は都心の再開発や分譲マンション事業を数多く手がけ、業界トップの営業利益率を誇る。
「ただ、風向きが変わってきます。五輪特需に沸くはずだった東京の臨海エリアなどは、コロナで状況が一変した。
三井不動産の『ららぽーと豊洲』にほど近い立地に、住友不動産は昨年6月に複合商業施設『有明ガーデン』を開業しました。五輪で世界各国の観光客が食事や買い物を楽しむはずでしたが、開催が危ぶまれる状況で人影はまばらになり、当初の想定とは大きく変わった」(不動産ジャーナリスト・榊淳司氏)
住友不動産は昨年4月、羽田空港跡地に複合施設「羽田エアポートガーデン」を開業予定だったが、コロナで無期延期に追い込まれている。
同社広報部は、「有明ガーデンは徐々に知名度が上がり、粛々と営業しています。羽田の施設の開業日は未定のままです」とコメントした。