田代尚機のチャイナ・リサーチ

オンライン医療サービスが世界に“破壊的イノベーション”をもたらす可能性

 提携先病院、カバーする地域(32省、379都市)、配送センター、倉庫を大きく増やすことで、新型コロナ禍で急拡大する潜在需要の獲得に全力を上げる。提携先を含めて医師団を囲い込み、それにAIを付加する。

 規模が大きくなればなるほど、経験を積んだAIは精度を高める。医療のようなユーザーが保守的になりがちなサービスでは、規模の拡大は知名度の高まりを通じて(あくまで“評判が良ければ”であるが)安心、信頼の高まりに繋がる。規模の経済が働くとみられるこうしたサービスは大きければ大きいほど有利、早く成長すればするほど有利だ。同社の拡大戦略が計画通りに進めば、正に世界に“破壊的イノベーション”をもたらすことになるのではないか。

 同社の業績に影響を与えるほどの規模ではないが、同社とソフトバンクは2018年10月、合弁でヘルスケアテクノロジーズを設立、日本でオンライン医療サービスを展開している。昨年7月29日からオンライン健康医療相談サービス「HELPO(へルポ)」の提供を開始した。これは同社が中国でやっているサービスの一部ではあるが、事業のコンセプトは同様だ。2月3日付のヘルスケアテクノロジーズ社ニュースリリースによれば、“唾液PCR検査を個人向けに提供開始”したそうだ。

 日本が高度成長を成し遂げた際、日本企業はまず、アメリカのビジネスを模倣し、それを改良、改善することで自己のビジネスを確立させ、発展させた。それが今度は中国からビジネスシーズを導入する時代となった。

 日本企業が自ら“破壊的イノベーション”を思いつくことはできないのだろうか。中国のイノベーション企業の奮闘をみるにつけ、一抹の寂しさを感じる麺もある。もっとも、中国であろうと、アメリカであろうと、参考になるビジネスがあるということはありがたい。ヘルスケアテクノロジーズのような新しい業態の企業が日本でも既得権益者たちに打ち勝ち、急成長できるかどうか、しっかりと見届けたい。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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