今の40代を中心とする「就職氷河期」世代は、バブル崩壊後の不安定な経済不況から企業が新卒採用を抑制したため、厳しい雇用環境を強いられた。希望する職に就けず、現在も不遇な環境で就労していたり、不安定な仕事に就いたりしている人も少なくない。
政府は2019年、この世代の正規雇用を30万人増やすとの目標を閣議決定した。しかし現在、その目標は、コロナ禍による景気低迷で窮地に立たされている。共同通信社が主要111社を対象に実施したアンケートによると、「就職氷河期世代の採用予定なし」とした企業は、回答があった102社の約88%に上った。救済措置すら満足に履行されぬ状況に、氷河期世代は今何を思うのか。ある40代女性の話を聞いた。
都内の有名私立大学を1997年に卒業した女性・井上さん(仮名・46歳)が就職活動をした際は、単に不況だったというだけでなく、女性ならではの苦労も今より多かったと振り返る。
井上さんは1974年生まれの団塊ジュニア世代。女性で4年制大学に進学する人は2018年に半数を超えたが、井上さんの入学時は2割弱と、全体的には少数派だった。井上さんの両親は高卒だったが、娘には大学を卒業して欲しいという強い願いがあり、井上さんも自然と大学進学を意識するようになった。今よりも遥かに競争率の高い入学試験を突破したものの、大学を卒業するタイミングで氷河期がやってきた。
「正直、『こんなはずでは……』という感じでした。子供の頃は、バブルに沸く大人が楽しそうだなと思っていたのに、自分が社会に出る時には、すっかり幻。当時、女性が就職するには『一般職』と『総合職』がありました。一般職が担う事務的な仕事は派遣会社に外注するケースがほとんど。そして総合職は男子優先。女性が正社員になる道はとにかく険しかったです」(井上さん)
当時の就職情報誌には、「男性○人」「女性○人」と募集人数が書いてあったが、女性の募集人数は井上さんが就活した年の数年前から目減りするばかり。女性の募集が「ゼロ」になった会社も少なくなかった。
「わずかな望みをもって説明会や面接に参加すると、圧迫面接は当たり前。敢えて理不尽な質問をして、回答の仕方を見るという建前でしたが、ほぼ嫌がらせに近いものでした。私の場合、『体小さいけど、低血圧でしょ? そんなんで朝起きられるの?』と言われたことがあります。