令和の時代は、「女性のおひとりさま」がさらに増えていく。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年に全国で625万世帯だった65才以上の高齢者のひとり暮らしは、2040年に896万世帯まで増える。これにより、高齢者世帯のうち40%がひとり暮らしになると見込まれる。
さらに、同じく2040年には、65才以上の女性の約4人に1人がひとり暮らしになると予想される。これは、女性の平均寿命が男性よりも長く、死別によって「おひとりさま」が増えることが影響している。
死別に限らず、生き方が多様化している現代では、離婚や別居婚、生涯未婚など、女性がひとりで生きていく選択肢を取ることは当たり前の生き方の1つとなっている。
高齢女性のひとり暮らしがごく一般的になる一方で、気になるのはさまざまなリスクだ。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長で老年医学が専門の下方浩史さんが指摘する。
「高齢でひとり暮らしになると、日々の活動量が減って心身機能が低下し、寝たきりになる手前の状態を指す『フレイル』になる恐れがあります。私の推計では、2040年に85才以上の女性の2人に1人がフレイルになると予想しています。もしフレイルが進行して寝たきりになったなら、ひとり暮らしを続けることは困難になるでしょう。
また日本の高齢女性は骨が弱く、骨関節疾患で寝たきりになったり、生きがいを失って老人性うつ病になったりする割合が高い。うつ病に関しては、男性は40代くらいで発症する人が多いのですが、女性は60~70代が最も多い。
ほかにも、高齢のひとり暮らしは強盗や詐欺など犯罪の被害にあう危険も。最終的には自宅で誰にも看取られず孤独死する恐れがあります」
認知症も深刻な問題だ。厚生労働省は、2025年に65才以上の5人に1人が認知症になると推計している。
リスクの多さを目の当たりにすると、やっぱり老後は1年でも長く夫と暮らすか、子供や孫と同居、はたまた施設に入った方が幸せに暮らせそうだ──多くの人はそう考えるのではないだろうか。もちろん、長年、家族と同居を続けてきた人の中には、その方が向いている人もいる。
しかし、実際に60才を過ぎてから「女のひとり暮らし」を実践している人たちの話を聞くと、まったく新しい老後が見えてくる。