しかし、前述の通り、高齢のひとり暮らしはリスクが絶えない。加齢とともに体が衰弱すれば、日常生活を維持することも簡単ではなくなる。だが辻川さんは、高齢女性こそ、ひとり暮らしをするべきだと話す。
「人間は使い続けている能力は衰えにくいものです。なんでもひとりで対処するということは、さまざまな能力を使いますから、衰えを予防することに作用します。日常生活を妻に支えてもらった高齢の男性は、ひとり暮らしを始めると苦労する人も多いですが、女性はひとりで生きる能力がもともと高く毎日の家事でトレーニングも積んでいます」
子供世代はというと、「高齢の親はひとりで暮らすより施設が安心」と考えがちだ。確かに、家事を自分でやらなくていいので転倒などのリスクは減り、体調を崩せば、すぐにスタッフが駆けつけてくれる。高級な施設であるほど、サービスは至れりつくせりだ。しかし、それが幸せとは限らない。
「施設では“入居者の管理”が最も重要視されるので、自分のやりたいことが自由にできません。私が出会った95才のひとり暮らしの女性は、家族が心配して、これまでに5回施設に入居させましたが、5回とも1週間で退居しました。理由は、『お菓子を食べさせてもらえないから』。つまり、わがままなんです(笑い)。最近は目も見えなくなってきましたが、クイズが趣味のため認知症はなく、お菓子を食べることが唯一で最高の幸せだと話していました」
目の前の「好きなこと」に没頭する。これぞ、究極のひとり暮らしだ。
※女性セブン2021年3月4日号