要請に従わないときは、区分所有法の管理者が(多くは組合の理事長ですが)原告になって、違反住民を被告として飼育の中止を請求する裁判を提起できます。実際、規約の効力を認め、違反したペットの飼育中止を命じた裁判例がたくさんあります。
もっとも、飼育を禁止する判決が出ても、愛着のある動物の飼育を任意にやめることは期待できません。その場合には、強制執行の1つの方法である「間接強制」が使われることになると思います。
これは、飼育をやめるまで、裁判所が定める一定の金額を支払わせることにより、判決の結果の実現を図ろうとするものです。言わば、罰金を支払い続けさせるわけです。それが続けば、いずれ音をあげて、ペットの飼育をやめるか、ペットを連れて出て行くかの選択をせまられることになるでしょう。
厳しいようですが、管理規約が守られないルーズなマンションになると居住環境が悪化し、資産価値が下がる可能性もあります。そうなると区分所有者全員の不利益になるので仕方ありません。
恨まれることが心配であれば、匿名で管理組合に連絡することも考えられます。しかし、問題提起の効果はあまり期待できないでしょう。とはいえ、根拠もなく隣人を管理規約に違反していると非難することはできません。管理組合の役員に、猫の鳴き声を確認してもらうなどして相談し、管理組合として対処するよう求めるのがよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年3月4日号