こうした動きを受けて、株式市場の潮目も変化している。行動経済学の観点で言えば、従来の「フレーミング効果」が崩れ始めている状況だ。フレーミング効果とは、簡単に言えば物事をある“枠”に当てはめて“思い込む”こと。株式市場はこれまで、コロナ禍で「企業業績は低迷」という“フレーム(枠)”をはめ込んで、「業績が回復しないのが当たり前」、「しばらくは金融相場が続く」と思い込んできたが、少しずつ状況が変わり、「どうもそうではなさそうだ」という思惑が広がり始めたことで、業績相場へと移行する新たな局面を迎えているようだ。
実際、株式市場ではそうした「潮目の変化」にいち早く気付き始めた買いが広がっている。日経平均株価が昨年11月に2万4000円を超えてから、わずか3か月で6000円も値上がりし3万円の大台を超えてきたのも、それが一因だろう。株価は、金融相場から業績相場に移行することで上昇をより確かなものにしていく。まだ楽観視はできないが、業績相場へのシフトが進んでいけば、さらなる株高も予想される。
コロナの収束次第ではあるが、日経平均株価が3万円の大台を超えた今、少なくともそこからさらに5~7%の上昇、つまり3万1500~3万2100円程度までには達することが予想される。日本経済を覆っていた「フレーミング効果」が崩れ始めた以上、早い段階で「日経平均3万2000円超え」があってもおかしくはないだろう。
【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。法政大学大学院教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。