NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で、新一万円札の肖像にも選ばれた渋沢栄一は数多くの企業を興した“日本資本主義の父”として知られる。
明治から大正にかけて約500社の起業に関わり、近代日本の黎明期を支えた渋沢関連企業。その後、分裂や合併を経て、現在もその多くがトップ企業として君臨するが、すべてが好調というわけではない。
1873年に渋沢が日本初の民間銀行として設立し、初代頭取に就任した第一国立銀行(後の第一勧業銀行)はみずほ銀行の前身だ。しかし、近年の業績ではメガバンク3行の中で後塵を拝している。『経済界』編集局長の関慎夫氏が語る。
「みずほ銀行は財閥系メガバンクとは違い、第一勧業、富士、日本興業の3行が対等という理想を掲げて一緒になった。それが結果的には三すくみの状況を生んでしまった。合併直後のシステム統合問題は象徴的で、3行の中で最も優れたシステムに統合すればいいところを、3行を生かしながら連結しようとして障害が起きた。
渋沢は公益性を重視したといっても、激しいビジネス競争を否定したわけではない。社内の和を重視する姿勢が仇となった」
東京海上ホールディングス(以下、HD)の前身の東京海上保険も、渋沢が創立発起人だった。東京海上HDの2020年4~12月期の連結決算(以下、同)で純利益は1127億円で業界トップを走る。
「早くから海外に進出し、外国企業のM&Aにも積極的で、同業他社に比べて海外事業が圧倒的に強い。実業家に転身後、先頭に立って海外貿易を奨励した渋沢の精神に基づいている」(前出・関氏)