ところが、実際には路線価の2倍の1億円で売れたので、弟は当然「だったら5000万円欲しい」と言い出し、5000万円ずつ相続することになった。円満に思える話だが、そこでは終わらない。『トラブル事例で学ぶ失敗しない相続対策』著者で相続コンサルタントの吉澤諭さんが話す。
「相続税申告書の上では、兄が相続したのはあくまで5000万円の相続税評価額の家だけ。しかし、遺産分割協議は、話し合われたときの時価で決まります。家が1億円で売れて、約束通り弟に5000万円払ったことで、書類の上では兄は“相続した5000万円をまるごと弟に渡した”ことになり、相続税はゼロ。本当は兄も5000万円を手にしているのに、弟にだけ、相続税がかかってしまいました。売ってから分けるのではなく、はじめから2人の共有の財産として売って、“売れた額の半分ずつ”と決めておけばよかったのです」
事前にやっておけばよかったと思っても、もう遅い。相続のトラブルはそんなケースであふれているようだ。
※女性セブン2021年3月11日号