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母の遺言書が見つからず妹に家の権利書を奪われた80代男性の本当の悲しみ

口約束だけでは信じてもらえなくて…(イメージ)

口約束だけでは信じてもらえなくて…(イメージ)

 兄弟姉妹や親族が遺産を巡って骨肉の争いを繰り広げる“争族”が増えている。普段から仲が悪いきょうだいであれば、相続の話し合いでも不信感が募り、トラブルになることもあるだろう。また、きょうだい間の生活レベルが異なると、“もっとこっちによこせ”などという主張が出てくる可能性もあるはずだ。

 そんな相続における争いを回避する重要な手段の一つが「遺言書」だ。

 昨年亡くなった齊藤朋子さん(仮名)は、遺言書をつくることで自分の財産を守ることができた1人だ。結婚しておらず子供もいなかった齊藤さんの相続人は、唯一の肉親である弟だけだった。だが、「両親の世話もせず遊び歩いていた弟には、私の遺産はびた一文も渡したくない」と語っていたという。

「そこで齊藤さんは、ずっとお世話になっている知人を養子に迎えて、さらに遺言書までつくり、弟には一切渡らないようにしたのです。さらに念には念を入れて、“全財産を養子に渡す”という思いを遺言書の付言事項として書き、動画にも残しました。動画自体には法的な効力はありませんが、遺言書とセットにすると思いが伝わり、かなり有効な遺言になります」(相続終活専門協会理事の貞方大輔さん)

妹たちに信じてもらえなくて…

 遺言書は法的にはもちろん、残された人の心にも訴えかけることができるが、大切にしまい込んで見つからなければ、なんの意味もない。宮城県に住む3人きょうだいの長男の松川雄二さん(82才・仮名)は、がんで入院中、当時60代だった2人の妹に「お母さんから家を相続したでしょう」と、自宅を家探しされ、権利書を奪われた。

「きょうだいの中で唯一戦時中生まれだった私は、10代の頃から働いて家を支えていました。母は前々から“いままで散々苦労をかけたから、私が死んだら家はお前にあげるわ”と言ってくれていたのですが、母の死後、肝心の遺言書が見つからなかった。

 年の離れた妹たちは、私が10代で働いていたことも、妹の学費を工面したことも知りません。知らなくていいと思ってずっと話していなかったのですが、いざ母が亡くなってから本当のことを話しても、2人とも“お兄ちゃんは若い頃から冗談ばかりね”と、まったく信じてくれなかった」(松川さん)

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