故人の考えや思いを伝える貴重な手段である「遺言書」。通常の手紙とは違って、本人がこの世を去った後に内容が明らかになる。その遺言書に関して、7月10日から、「自筆証書遺言書保管制度」という新たな制度がスタートする。司法書士法人ABC代表の椎葉基史さんが解説する。
「遺言書には、自分で書く『自筆証書遺言』と、公証人が作成して保管まで行う『公正証書遺言』の2種類があります。自筆の遺言書は作った後に紛失したり、第三者が意図的に破棄するなどトラブルが多く、一般的に遺言書というと公正証書遺言が使われることがほとんど。しかし、公正証書遺言は手数料などの費用が高いため、そもそも遺言書を残そうとする人が少ないんです。新制度では、保管に難があった自筆の遺言書の問題点をクリアにし、積極的に遺言書を残してもらおうというのが狙いです」
意外だが、遺産相続で揉めるのはお金持ちではなく、相続財産5000万円以下の中流層以下が圧倒的に多い。自分には関係ないなどと決して思わず、できる限り遺言書を残すことが望ましい。しかし、なかには遺言書を残したせいで、トラブルになることもある。
「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年5月に急性覚醒剤中毒で急死した資産家の野崎幸助さん(享年77)は、13億円といわれる財産すべてを、居住地である和歌山県田辺市に寄付するとの遺言書を残した。これに親族らが不満を持ち、遺言書の無効確認を求めて裁判を起こし、現在も係争中だ。
法的効力を持つ遺言書に限らずとも、故人が最期に口にしたり、ひそかに残していた「遺言」は大切なメッセージとして、残された人々に影響を与えることもある。こういった「遺言」に振り回されるのは、誰もが知る有名人も例外ではない。