遺産を巡って家族や親族が争う「争族」が増えている。「うちは普通の家庭だから、争うほどの遺産なんてない」などと油断するなかれ。むしろ、普通の家庭の方が、争族になることが多いのが現実だ。相続トラブルは、いつ誰の身に降りかかるかわからないのである。税理士法人アイエスティーパートナーズ代表の高野眞弓さんが話す。
「最も相続トラブルが多いのは、遺産3000万円前後からそれ以下の家庭。遺産が少ない方が、揉めているケースが多いのです。お金持ちの家庭ではあらかじめ相続税対策としてそれなりの準備をしてきているので、揉めることは少ない。しかし、対策を知らない人や、家族の中に生活に困っている人がいると、“50万円でも100万円でもいいから、もらえるものは欲しい”となって、トラブルにつながります」
遺言書がない場合、きょうだいの相続額は基本的に全員平等に分けるよう、相続法で定められている。しかし、いざ相続になると突然、長男・長女が「おれ(私)が仕切って分けてやる」と言い出して、トラブルになるケースも多い。
もし自分が“渡したい人”に確実に遺産を相続させたいなら、「養子」にするのが最終手段だという。神奈川県の加藤涼子さん(享年79・仮名)は、1人目の夫と離婚後、2人の連れ子のいる男性と再婚した。しかし、連れ子を自分の養子にしないまま亡くなってしまい、書類上では加藤さんとは“他人”の子供たちには、遺産を相続する権利がなかった。
「20年以上一緒に暮らしていたので、母と“他人”だなんて考えが浮かびませんでした。亡くなる前に、自分たちが養子になっているかどうか確認すればよかったです」(加藤さんの息子)