コロナ不況で多くの国民が収入を減らし、全日空などボーナスなしに追い込まれた企業も少なくない。経団連の調査でも冬のボーナスは平均9%ダウンした。ところが、人事院勧告では国家公務員の2020年度のボーナスはわずか「0.05か月」の引き下げだった。
国民が苦しんでいるのを横目に“形だけ”下げておこうというのだ。
また、「年金」「医療」や「休職」した時の生活保障から「定年延長」まで、公務員には特権的な“副収入”ともいえる制度があり、感染拡大で国民の生活不安が高まるほど官民格差が大きくなっている。
まず年金だ。国家・地方公務員の共済年金と民間サラリーマンの厚生年金は2015年に制度が統合された。しかし、現在も年金額は公務員のほうが手厚い。
共済年金には「職域加算」という制度があり、現役時代の給料が同じなら厚生年金より支給額が2万円程度高かった。原資は税金だ。職域加算は統合時に廃止されたが、それまでの共済の加入期間分は「経過的職域加算」として年金額に上乗せされる。病気を理由に辞任した山田真貴子・前内閣広報官は1984年入省で、その年金にも、制度統合までの31年分の経過的職域加算がつくのだ。
ちなみに山田氏は“得する年金世代”で、64歳から年金の特別支給が始まる。民間サラリーマンの特別支給は「厚生年金の報酬比例部分」に相当する金額だが、公務員は特別支給の時点からそれに加えて「経過的職域加算」も適用される。
さらに公務員共済には「家族療養費附加金」などの制度があり、医療費が安くなる。
制度が複雑なため詳細は省くが、月給50万円未満のケースで比較すると、自分や家族が入院し医療費が1か月100万円かかった場合、民間サラリーマンは「高額療養費制度」を利用しても自己負担は「8万7430円」だ。しかし、公務員は各種の付加金制度で6万2400円が補填され、「2万5030円」まで安くなる。
付加金制度は中小企業などが加入する「協会けんぽ」にはなく、採用する一部の大企業の健保組合も財政難から廃止や縮小するケースが増えている。