コロナ禍で苦境に喘ぐホテル業界。大手が軒並み赤字に転落するなか、アパホテルの決算に驚きの声が上がった。アパグループの2020年11月期連結決算は売上高904億円(前期比34.1%減)、経常利益10億900万円(同97%減)と落ち込んだものの、純損益で9億4900万円の黒字を確保したのだ。
「昨年4月の緊急事態宣言下は、ホテル稼働率が30%程度まで落ち込む厳しい状況でしたが、1泊2500円の『コロナに負けるなキャンペーン』を打ち出したことで、単価は下がったものの6月には稼働率72%まで戻すことができました(同時期の国内ホテル稼働率は平均24%)。
この企画やテレワークプランで新たな需要を掘り起こし、自社サイト『アパ直』への誘導で手数料を削減できたことも大きかった」(アパグループ秘書課)
とはいえ、1泊2500円で泊めれば赤字が膨らみそうにも思えるが、どんな“カラクリ”があったのか。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「アパはリーマンショック後の地価下落時に駅前中心に大量の土地を安く購入し、そこにホテルを建てる戦略が当たった。またホテル以外の不動産事業の収益も大きく、それでグループ連結の黒字を確保できたと見られます」
アパグループは2021年も新規ホテルの開発を計画通り進め、24棟5007室の開業を予定しているという。
「ただし、大量出店は諸刃の剣です。コロナが収束して人の流れが戻ればさらなる成長が期待できるが、見込みが外れれば逆に大きな負担となる」(前出・関氏)
アパグループは、
「コロナは長くてもあと1年で収束すると予測しています。コロナ禍でホテルの売り情報が増えてきていますので、積極的に取得を検討し、さらに出店ペースを加速していきたい」(秘書課)
と強気だが、今後も攻勢は続くのか。
※週刊ポスト2021年3月19・26日号