「電子書籍は読み終わっても売れない」
Bさんは当初、まったく逆の考え方だったという。どうしても保存しておきたい本は「紙」、読み流したいものは「電子書籍」だと考えていたのだ。だが、実際は逆。数多く読むには紙、保存しておきたいものは電子書籍の方がいいのではないか、と考えが変わった。
「例えば仕事上読まなくてはいけない本とか、ちょっと中身に触れたいようなものは紙の方がいい。パラパラ読みができるし、不要になったら売ることができる。実はコスパが良いんです。一方で電子書籍は、中古として買うことも売ることもできないことに気がつくと、軽い気持ちで手を出しにくくなりました。一方で、紙のように黄ばんだり劣化したりしないので、永久保存版的な扱いに向いている。今はそういう使い分けが私にはあっているかなと思っています」(Bさん)
コロナ禍で“本のぬくもり”を感じたという人もいる。専門商社で働く40代の男性会社員・Cさんは、電子書籍に移行したものの、どこか物足りなさを感じていた。
「今やサブスクでたくさんの本を読むことができますが、一冊一冊の満足度があまり高くないんですよね。紙だと、買った時の自分の状況なんかも合わせて覚えているのに、電子書籍だと、『なんでこんな本買ったんだっけ?』というようなものも……。昔は本屋さんで表紙買いみたいなこともしていて、“運命の一冊”との出会いを楽しんでいました。コロナ禍で在宅時間が増えたこともあり、紙の本のぬくもりを感じながら読書をしたいという気持ちに駆られています」(Cさん)
電子書籍の浸透の裏で、紙媒体へ“出戻り”する人たちがいる。デジタル一辺倒ではなく、アナログの良さを見直す良い機会になっているのかもしれない。