また、使用貸借当事者間の人間関係が背景になっている場合も多く、土地の返還請求が権利の濫用との反論を受ける場合もあります。そのときには、立ち退き料の支払いで解決を図る場合があります。
最高裁は相当期間について、単に経過した年月だけでなく、無償貸借になった特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程度、貸主の土地使用の必要性の緊要度など双方の諸事情などの諸点を比較衡量して判断すべきとしています。
この判決の事例では15年8か月が経過しており、「年月の経過としては、一応相当な期間と解しえないことはない」との見解を示したものの、建物を増築したのに、貸主が黙認していた等の諸般の事情から貸主の立ち退き請求を否定しています。
あなたの場合、4年ほど前のお父さんの死亡時に3年後の立ち退きを請求したのですから、約15年間の使用になり、立ち退きを求めても無理な要求ではありません。しかし、諸般の事情で判断され、親戚側の事情も考慮されるので確定的なことは言えません。
協議を続け、親戚も了解する長さで期間を切った契約に変更したり、いますぐに土地を返してほしいときは、立ち退き料を支払うなどの妥協も検討してはいかがでしょうか。立ち退き料の額も話し合いで決めることで算定式など基準はありません。
話し合いができないときは、親戚の住まいを管轄する簡易裁判所に調停を申し立てて、弁護士や有識者で構成する調停委員会に入ってもらい調整してもらうとよいでしょう。
【プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年4月1日号