親切心などから、親しい知人や親族に無償で家や土地を貸す人もいるだろう。「知らない人に貸すよりはかえって安心」と思う人もいるだろうが、「親しい間柄だから」と契約書をしっかり交わさなかったことで、後々トラブルに発展するケースは少なくない。特に揉めやすいのが、貸した本人が亡くなってしまった場合だ。トラブルを避けながら立ち退きに応じてもらうにはどうすれば良いか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
うちの土地に、父の親戚が家を建てて住んでいます。15年前に父が親戚に土地を貸し、そのときに父が「地代はいらない」と言ったようで、地代をもらったことはありません。しかし、4年前に父が亡くなったので、その親戚に3年以内に立ち退いてほしいとお願いしました。ところが、期限を過ぎても立ち退いてくれず、「立ち退くなら高額な立ち退き料を払ってほしい」と言われました。立ち退いてもらうにはどうしたらよいですか。もし立ち退き料を払うとしたら、金額はどのくらいですか。(鹿児島県・60才・主婦)
【回答】
親戚が土地をタダで使って家を建てているのは使用貸借です。立ち退いてもらうには、使用貸借契約を終了させる必要があります。契約で使用貸借の期限を決められていれば、そのときまでですが、期限の定めがない前提で検討します。
使用貸借の目的が決まっている場合は、借主がその目的に従った使用を終えれば、返還しなければなりません。お父さんは建物を建てさせているので、建物所有目的で土地を貸したと考えられます。その場合、建物が朽廃していれば使用が終了していますが、住んでいるのでこの意味での終了は無理です。
使用を終えていなくても、目的に従って使用するのに足りる期間(相当期間)を経過したときは、貸主は直ちに返還を請求できます。そこで、相当期間が経過したかが問題になりますが、この点については一義的な基準がありません。