万が一の時の逃避先となるのは中国か
新興国の経済は脆弱である。財政状態も悪化している中での利上げである。このまま、アメリカの長期金利の上昇が進むようなことがあれば、新興国からの資金流出圧力はさらに高まり、利上げが加速、そのたびに景気は悪化するといった悪循環に陥ってしまう。それはそのまま世界的な金融危機に繋がり、アメリカや先進国の金融、経済を著しく傷つけてしまうことになりかねない。
グローバル化した世界はアメリカを中心に回っている。アメリカが積極財政政策、超金融緩和政策で経済を立て直そうとすれば、逆の結果になってしまうリスクがある。FRB(連邦準備制度理事会)は長期金利の上昇を放置できず、長期金利の上昇を招くインフレ率の上昇を放置できない。
ただ、世界の主要国の中で中国だけは、この大きな金融システムに部分的にしか接合していない。
中国国内の投資家が海外市場に投資する際にも、海外の投資家が国内市場に投資する際にも、国家の監督管理を受けるシステムが温存されている。為替レートは実体としては管理フロート制であり、中国人民銀行が必要な時に任意にコントロールできる余地のあるシステムだ。
モノの実体経済において、中国はグローバル化の中心にいながら、金融システムはアメリカ中心のシステムの外にいる。足元で経済回復の足取りはしっかりしており、財政、金融政策は正常化に向かっている。ファンダメンタルズの面では申し分ない。
万が一、国際金融システムに大きな問題が起きた場合、中国金融市場は最後の逃避先となるかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。