あなたは事態の深刻さを会社に理解させる必要があります。まずは、Aさんがあなたの悪口を言いふらしている事実の把握が必要です。曖昧なまた聞き情報だけで訴え出ても、Aさんから否定されたときに反論できないだけでなく、かえって「名誉毀損だ」などと逆ねじを食わされかねません。その可能性があると会社も動けないので、介入を避けるでしょう。
Aさんから直接悪口を聞いた同僚などがいれば、いつどこでどんな機会にどんな悪口を言ったのか詳しく聞き取って、いわば証拠をそろえる必要があります。その数は多いほどいいことは言うまでもありません。可能なら、悪口を録音してもらうのが確実でしょう。
こうしてAさんの悪口が証明できるのであれば、会社の上司や相談窓口に正式に文書をもって対策を求めるのがよいと思います。会社は文書をもって申し出られ、その証拠があることを知れば無視できません。また、独自にAさんに対して不法行為に基づく慰謝料請求ができる場合もあります。
しかし、Aさんが誰に何を言ったのか特定できない場合には、持ち出すのは危険です。確たる証拠をつかむまでがまんするか、気になるでしょうが、忘れるように努めるしかありません。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年4月22日号