コロナ不況による失業者が10万人を超え、状況は深刻さを増すなか、菅義偉首相が今年1月、コロナ禍で生活に苦しむ人たちへの対応を巡り「最終的には生活保護がある」と発言し波紋を広げた。「簡単に言うが、ハードルが高い」といった批判が相次いだが、実際、生活保護の申請時、窓口の担当者に拒否されたり、攻防戦になったりという話は少なくないようだ。
生活保護の申請は、各地域の役所内にある福祉事務所や生活福祉課などの部署で行う。だが、5段階ある手順のうち、2番めの申請で窓口担当者との攻防戦となることが多々ある。貧困や労働問題に取り組む「POSSE」代表の今野晴貴さんが話す。
「窓口によっては普通に受け付けてくれるところもあり、対応は自治体や担当者次第なのですが、なかにはひとりで申請に行くと、いわゆる“水際作戦”と呼ばれる対応で追い返されたり、“やんわりと気まずくさせて帰される”ということが、以前から頻繁に起きています」
役所の福祉従事者が、なぜそのような対応をするのか? 生活保護問題に詳しい「あかり法律事務所」の弁護士・小久保哲郎さんが語る。
「なるべく財政支出を減らし、ケースワーカーの担当数を増やさないようにしたいという意図があるのかもしれません。ですが、生活保護費用の出所は国費が4分の3で、地方自治体が4分の1。この4分の1も地方交付税でほとんどが補填されています。また、福祉の専門性もない地方公務員が3~5年ごとに交代するのも日本の窓口行政荒廃の原因。この背景には、深刻な人材不足があるといえます」
さらには、申請書類は一般の人が受け取れる場所には置かず、担当者が渡す人を選んでいるケースまであるという。だが、つくろい東京ファンド代表理事の稲葉剛さんは、「指定のフォーマットは決まっていない」と話す。
「申請書は、実はフォーマットが決まっておらず、必要事項が書いてあればなんでも有効です。ネットにもダウンロードできる申請書が多数あります。私が代表を務める“つくろい東京ファンド”では、生活保護申請書を作成できるウェブサイト『フミダン』を昨年末から開設しているので、ぜひご利用ください」
これらの用紙を事前に記入して窓口に持参するか、FAXすることで、申請が受理されやすくなるという。また、窓口で申請する場合は、支援するNPOスタッフや弁護士などに同行してもらうのも有効だ。