長野県在住の60代男性は、実家で同居する90代の父親が亡くなった。晩年の父親は寝たきりになり、男性の妻が付きっきりで介護をしていた。
ところが父の死後、遠方で離れて暮らす男性の弟が突如、「俺も法定相続分をもらえるはずだ」と主張してきた。男性が肩を落としてつぶやく。
「弟は全く父の世話をしなかったので、よく主張できるなと驚きました。遺産といっても父が残したのは自宅くらいのもの。兄弟で遺産を折半するなら、家を売却する必要があります。実家の維持費用や介護費の持ち出し分、妻の献身を考慮すれば、私たちが多く財産を相続できていいはず。弟の主張には、到底納得できません」
子供たちの争いを避ける方法はあるのか。
「遺産分割で揉める最大の要因は“遺言書がないこと”と“不正確な遺言書”です。まずは、財産目録を作って財産を把握し、生前贈与の額や相続人の数なども親子で共有しておきたい(表参照)。
スムーズな相続をするためには、親が生きているうちにどれだけ段取りをつけておくかが重要です」(曽根氏)
※週刊ポスト2021年5月7・14日号