新疆ウイグル自治区での人権問題を巡り、世界中から中国政府に批判の声が巻き起こっている。そうしたなか、多くの日本企業が沈黙を貫く一方、ある企業が下した「決定」が注目されている。
飲料・食品大手のカゴメが、新疆ウイグル自治区で生産されたトマト加工品の使用を中止すると報じられた(日本経済新聞4月13日付)。
カゴメはソース類の原料に使うため、トマト生産量世界1位の中国から、新疆ウイグル自治区で生産・加工されたペーストを輸入していた。しかし、同自治区におけるウイグル人への人権侵害への批判が国際社会で高まったことなどを受け、昨年中に輸入を停止。輸入済みの原料も、今年中に使用を終えるという。
中国メディア『環球時報』は〈日本の“ケチャップの王”がウイグル産トマトの購入を停止、専門家は「背後に他の勢力の影」と指摘〉の見出しで、〈福島の核汚染水の海洋放出が世界から注目されるなか、〔中略〕話題の焦点を逸らす狙いがある〉などの専門家のコメントを掲載した(4月15日付)。
報道を受け、中国版ツイッター微博(ウェイボー)には日本への反発と中国を擁護する書き込みが相次いだ。
〈この会社のケチャップを輸入禁止にしよう〉
〈中国市場を失った企業は、将来の発展の道が閉ざされる〉
なぜカゴメは「ウイグル産トマトの使用中止」が決断できたのか。経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう指摘する。
「トマトは比較的、産地による品質の差異が少ない農作物です。そもそも同社は気候要因から調達地は分散させており、ウイグル以外から買えばよい。また、販売市場も日本国内が主で、中国での売上比率は全体の0.4%と依存していなかった。ウイグル産トマトの輸入をやめても事業への影響が大きくないことが、今回決断できた理由でしょう」