新型コロナの感染拡大により、日本企業でも一気にテレワーク(在宅勤務)が広まった一方で、会社員はテレワークになると、将来の年金が減る可能性があるのをご存じだろうか。『週刊ポストGOLD 2021改訂版 あなたの年金』より、その内容を解説していく。
会社員は、給与が高くなるほど年金保険料の負担が大きくなり、そのぶん将来の受給額が増える。
具体的には、保険料負担額を決める際に「標準報酬月額」という数字が使われる。たとえば、会社からの給料が月額31万円以上、33万円未満の人であれば、標準報酬月額は「20等級、32万円」となる。天引きされる保険料は20等級なら2万9280円(社員負担分)と決まる。
「この標準報酬月額を決める際の“月給”の額には、会社から受け取る『通勤手当』が含まれます。完全テレワークが導入されて通勤手当がなくなると、基本給などの減額がなくても、標準報酬月額の等級が下がる可能性があるのです。標準報酬月額の等級は通常、毎年9月に変更されますが、2等級以上の減額が3か月連続すると、年の途中でも等級が引き下げられます」(社会保険労務士の北村庄吾氏)
神奈川や千葉、埼玉から都心のオフィスに通勤する人の場合、1か月あたりの通勤定期代は1万円台となることが一般的で、地域によっては2万円を超えることもあるだろう。
通勤手当を含めた月給が31万円(20等級)の人が、完全テレワークの導入によって月額2万5000円の通勤手当がなくなると、標準報酬月額は18等級(月給28万5000円)まで下がり、それが3か月続くと保険料の額が変わるというわけだ。
「手取りが増えた」と喜ぶのも束の間
神奈川在住で都内の会社に勤める40代会社員(男性)は「テレワークで満員電車に揺られることもなくなり、嬉しく思っていたのですが、社労士になった高校時代の同級生から、“将来の年金が減る可能性があるよ”と言われた。全く知らなかったので、驚いています」と話すが、そうした認識の人は少なくないと考えられる。