本連載の前回記事〈中国で医薬品株が再度急騰 コロナ禍が収束気配なのになぜ?〉(4月28日公開)で「インドのコロナ禍が中国本土医薬品セクターの株価上昇に繋がっている」ことを伝えた。これは株価が上がる明るい話だが、もちろんポジティブな面ばかりではない。インドがコロナ禍で経済危機に陥り、それがグローバルな危機へと発展するのではないかと懸念する声も聞かれる。
中国メディア「21世紀経済報道」が、ファンドの分析を行うアメリカ「EPFR Global」の最新データを引用しながら危機の全容を詳しく説明している。一部情報を付け加えながら、要旨を簡潔に纏めると、おおよそ以下の通りである。
コロナ禍により、悪性インフレ、サプライチェーンの分断などが起こるリスクが高まっている。銀行では不良債権が急増、破綻の連鎖が起きかねない。
インド経済はグローバル化が進展、アメリカからはIT産業を中心に企業間の取引が増えている。一方、世界の工場「中国」からは、自国で需要を満たすほど供給力のない多くの製品が輸入されている。貿易構造をみると、2019年の輸出先ベスト5は、アメリカ、UAE、中国、香港、シンガポール、輸入先ベスト5は中国、アメリカ、UAE、サウジアラビア、イラクである。
インド経済は米中いずれとも密接な関係にあるが、金融市場では圧倒的にアメリカとの関係が強い。
リーマン・ショックに端を発した金融危機以降、金融市場の対外開放が急速に進んだ。特に、2012年1月、非インド国籍の個人投資家に対して株式市場を開放して以来、外国人比率が急速に高まっている。持ち株ベースでは3割以上、出来高ベースでは5割以上を外国人投資家が占めている。この内、英米の投資家が大半を占める。こうした状況で、彼らが資金を流出させてしまえば、それがきっかけで再び金融危機が起きかねない。
インドの金融市場は未発達で、金融行政の及びにくい中小金融機関の比率が高い。金融当局の政策が稚拙である。当局のコロナ対策が行き過ぎている。不良債権の返済猶予がモラルハザードを起こしており、金融機関の経営を圧迫している──。