平穏な老後を過ごすにあたって、周囲の人に「言ってはいけないこと」が数多くある。とりわけ子に対する“禁句”に注意したい。時代の変化によって、親子の間で“常識”が変わっていることが「失言」を生む背景にある。
自身も還暦を来年に控え、30代と20代の子供2人を持つ教育・介護アドバイザーの鳥居りんこ氏は、子供の「仕事」への言及の仕方に注意を促す。
「例えば、『何回転職するの?』『なんで正社員にならないの?』『そんな仕事をいつまで続けるの?』などはつい言ってしまいがちな言葉ですが、親世代の価値観を押し付けているだけです。バブル世代より年長の人間は、大卒で大企業に就職して終身雇用というレールを歩んでいれば人生は安泰でした。子世代の雇用環境が理解できていないと、親子の溝は一気に深まります」
同様に、結婚観にも大きな違いが生じている。
「『やっぱり女は20代よ』『35歳までに産まなきゃダメって言われてるわよ!』『いい人いるの?』なども子供に何気なく言ってしまいがちですが、親が急かしてもどうにもなりません。現在の60歳前後は、“女性は結婚して子供を産み育てるもの”という考え方が支配的だった最後の世代です。経済状況も価値観もまったく違う子世代からしたら、うっとうしいだけ。良かれと思ってかけている言葉かもしれませんが、たいていは親が自分の不安を解消して安心感を得たいだけです」(同前)
すでに独立して離れて暮らす子供への言葉にも注意したい。鳥居氏が続ける。
「例えば盆暮れに子供が帰省した時に、世間話のつもりで『お隣さんが二世帯住宅を建てて親子ローンなんだって』『いいわね、お嫁さんがよく顔を出してくれて』などと発言するのは御法度です。親は事実を言っているだけのつもりでも、子供は嫌味を言われたと感じてしまいます」