当時、1株1650円だった同社株を2000株、計330万円分購入。営業マンの言葉通り、同社の株価は1か月で1750円に上昇した。だが、喜んだのも束の間、年明けのコロナショックで五輪開催が危ぶまれると、同社の株価は急落。昨年3月には1000円を割り込んだ。
「売らなければ損は確定しないと自分に言い聞かせたけど、毎日下がっていく株価を確認するのが想像以上につらかった。850円まで下がったところで全株を売却しました。4か月で投資額の半分にあたる約160万円を失い、妻には“そのお金で浴室のリフォームができたのに”と責められた。しかもその後、年末にかけてパソナ株が2000円まで上がったのを見て、“なんで売ってしまったんだ”とまた後悔する。つくづく自分は投資に向いていなかったのだと思います」
「仕組みはいまだによくわからない」
コロナ禍の市場の混乱は、投資を始めたばかりの個人投資家を翻弄した。関西在住の67歳男性は、2019年末に金融機関OBの友人から、「ここから原油需要が高まる」と解説され、翌年初めに原油価格と連動するETF(上場投資信託)を200万円分購入。この男性も「冷静さを欠いていた」と判断を悔やんでいる。
「ETFは販売手数料がなく、信託報酬も安いと言われて買いましたが、すぐにコロナ不況がやってきた。飛行機が飛ばないんだから、燃料になる原油の価格は当然、急落。少しは持ち直したものの、今も購入時の半値近い水準で、約100万円の含み損です。コロナの収束が見通せないから、売るに売れない」
解説をぶった友人は、元本割れのリスクには言及しなかったという。比較的ローリスクとされる投信でさえ、損失のリスクがあるのだから、さらにハイリスクの商品に手を出せば大火傷しかねない。
たとえば近年、新たな投資対象として注目される仮想通貨(暗号資産)だ。「仕組みはいまだによくわからない」と苦笑する70歳男性は、息子が“これは儲かる”と絶賛したことでビットコインの購入を決断した。
「一時は1ビットコイン200万円を超えていたのが100万円まで急落した2018年4月のタイミングで、反転上昇を期待して退職金から400万円を投じました。手続きは全部、息子にやってもらった。ところが、半年後にはさらに40万円まで続落。もう取り戻すのは不可能と判断し売却、約240万円の損失で終わりました。勧めてきた息子が気まずそうにしているのも申し訳なくて……」