ところが、フタを開けてみると思わぬ内容の遺言書が残されていた。
「父は後妻がウチの実家に住み続けられるように、『配偶者居住権』を設定していたのです。父が亡くなったら実家は処分して現金化するつもりだったのに、後妻が住んでいて何もできません」(同前)
前出・五十嵐氏は指摘する。
「2020年4月1日以降の相続から施行されている配偶者居住権は、自宅の持ち主が亡くなってもその配偶者は引き続き自宅に住める権利です。遺言書で配偶者居住権が設定されていれば、一生住むことができます。所有権が子に設定されていても、居住権を持った人間が別にいれば当然、買い手は見つかりません。後妻が亡くなるまで待つしかないでしょう」
老後の寂しさを乗り越えるための再婚が、子供との関係を悪化させたり、死後に子供に恨まれる原因になったりする。
魅力的なパートナーが見つかっても、再婚ではなく内縁関係のまま残りの人生を共に過ごすという考え方も検討したほうがいいのかもしれない。
※週刊ポスト2021年5月21日号