少子高齢化で、お墓の手入れをする人や引き継ぐ人が減ったことで、伝統的な石のお墓にこだわらず、散骨などを選ぶ人が近年増えている。だが、そうした“最期に眠る場所”の簡略化が進んでも、故人を思う気持ちは変わらない。最近では、従来のお墓に代わるさまざまな供養の形が生まれてきている。
「こもれびの 夫のとなりに 眠ろうか」
チッチとサリーでおなじみの半世紀以上続いたベストセラー漫画『小さな恋のものがたり』を生み出した漫画家のみつはしちかこさん(80才)は、新緑がまぶしい雑木林のベンチに腰掛け、一句詠んだ。咽頭がんを患い、10年前に先立った最愛の夫は、この雑木林のクヌギの木の下に眠る。
「クヌギの木が大好きだった夫は、生前から“樹木葬がいい”と話していました。日当たりのよい山の斜面にあって、家からも近いし、ここなら夫が満足しそうだと思って即決しました。きっと天国で喜んでくれていると思います」(みつはしさん)
樹木葬とは、許可を得た区画に遺骨を埋葬し、墓石などを設けずに花や木を墓碑として自然と共存する方法だ。みつはしさんは夫の隣に自分用の区画を購入しており、最期はそこで眠る予定だという。
このように家族同士で隣り合って入るケースのほか、ペットと一緒に入れるタイプ、桜をシンボルツリーにしてその周辺に遺骨を埋める「桜葬」など、樹木葬にはさまざまな種類がある。費用も一般的な墓石の半額程度ですむケースが多い。みつはしさんは、「ここに来るたび、なんだかほっとする」と言う。
「お墓にはなんとなく暗くて怖いイメージが伴いますが、ここは真逆。近くのベンチでくつろいだり、丘の上から見える景色を楽しんだり、俳句をひねったり。行けば面白かった夫のいいところばかり思い出して、『ごめんね』と言おうと思って来たのに、なんだかそこらへんの木の下であの人がマスクもせずに大好きなビールを飲んでいるような気がしてきて、『また来るね』と言って帰ります」(みつはしさん)