中国本土の鉄鋼株が急騰している。北京市政府系の北京首鋼(000959)は5月10日、ストップ高を付けた。メーデー休場明けとなった6日から3連騰、この間の上昇率は21.6%である。10日はそのほか、重慶鋼鉄(601005)、甘粛酒鋼集団宏興鋼鉄(600307)などもストップ高となっている。セクター全体に大量の資金が流入しているようだ。
中国の景気はしっかりとした回復基調にあり、その上、今年は第十四次五か年計画の初年度とあって設備投資の拡大見通しが強く、鉄鋼需要が旺盛である。こうした背景にあって、さらに今後鉄鋼価格が上昇しそうな材料が2つほど出てきた。
一つは産業政策の発動だ。工業情報化部は6日、「鉄鋼業界生産能力置換実施弁法に関する通知」を発布、6月1日から実施すると発表した。
鉄鋼業界生産能力置換実施弁法自体は2017年末に制定されている。業界の無秩序な生産能力の拡大をくい止め、設備過剰を解消し、地理的な産業配置の歪みを調整するために、M&A、企業リストラを推し進め、技術、設備レベルを引き上げ、省エネ、危険物質排出の削減などを促そうとする内容である。
経済が発展している地域ではどこも鉄鋼は生産過剰状態だが、発展の遅れている地域ではむしろ不足気味だ。そうした地域の国有企業に生産設備を譲渡することで、経済が発展している地域では最新鋭設備の投入を許可するといった仕組みである。
発言力の強い経済発展の進んだ地域の利益に配慮し、産業全体として技術レベルの向上を図りつつ、漸進的に構造調整を進めようとしたのだが、置換する資産に対して新しく設備投資できる枠の獲得条件が甘く、結果として生産能力の拡大は止まらなかった。
今回の通知は、置換条件を厳しくし、これまで以上に厳しく産業構造調整を進めようという主旨だ。過剰設備の淘汰が進むことで需給が更に逼迫するといった見通しが高まった。