大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

「台湾有事」なら中国経済は破綻必至 大前研一氏が考える平和的解決策

台湾有事をどう回避すべきか(イラスト/井川泰年)

台湾有事をどう回避すべきか(イラスト/井川泰年)

 4月の日米首脳会談の共同声明で台湾について触れられたことが注目を集めている。はたしてこれは、中国への抑止力となり得るのだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が、「台湾有事」という世界の、日本の危機を回避する方法について考察する。

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「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」

 4月の日米首脳会談は、共同声明にこう明記した。日米首脳間の文書で台湾に触れるのは、佐藤栄作首相とリチャード・ニクソン大統領による1969年の共同声明以来52年ぶりで、日本が1972年に中国との国交を正常化し、台湾と断交してから初めてだ。

 共同声明は「平和的解決を促す」としているが、中国への抑止力になるとは到底思えない。「ルビコン川を渡った」「中国の『報復措置』も考えられる」(竹内行夫・元外務事務次官/朝日新聞4月18日付)という指摘もあるように、中国にすれば、そこまで日米が踏み込んだら「一つの中国」原則が脅かされたとして反発するしかない。むしろ台湾統一の大義名分を得たとして、今は虎視眈々と軍事侵攻のチャンスを窺っているだろう。

 もし「台湾有事」となって中国とアメリカが戦端を開いたらどうなるか。米軍の“最前線”は、空軍の嘉手納基地や海兵隊の普天間基地がある沖縄ということになり、そこに中国のミサイルが撃ち込まれるリスクが高まる。さらに、海軍第七艦隊の基地がある横須賀や佐世保、空軍の横田基地、海兵隊の岩国基地なども攻撃目標になるだろう。つまり、台湾有事はイコール「日本有事」なのだ。共同声明を出した菅義偉首相に、その覚悟はあったのだろうか。

 報道によると、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月に上院軍事委員会の公聴会で、中国が西太平洋における軍事力で2026年までに米軍を上回る可能性が高いと警鐘を鳴らしたという。台湾海峡を挟んで米中が戦えば、中国が勝つかもしれないわけだ。

 だが、実は台湾の武力統一には大きな障害がある。

 仮に武力で台湾を併合できたとしても、中国は経済的に大打撃を受けるだろう。なぜなら、中国には電子機器受託製造の「鴻海科技集団(Foxconn)」、半導体受託製造の「TSMC(台湾積体電路製造)」や「UMC(聯華電子)」、食品メーカーの「頂新国際集団」など台湾資本の大企業が山ほどあり、台湾人も39万5000人(2019年)が中国企業の中枢で働いて中国経済を支えているからだ。

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