生活に困窮した際に利用する最後のセーフティネットが生活保護だ。生活保護の利用に心理的抵抗感を持つ人は少なくなく、中には「行政側に拒否されるのでは」と心配する人もいるのではないか。昨年12月から、厚生労働省のホームページでは「生活保護の申請は国民の権利です」と呼びかける告知が掲載されるなど、国が生活保護の活用をすすめている。本当に困窮した際は、ためらわずに活用すべき制度だろう。
生活保護問題対策全国会議の事務局長で弁護士の小久保哲郎さんは、「生活保護の受給申請は口頭でもいい」と語る。
実は、生活保護の申請書類には、定型がなく、受給したい意思さえ示せばいい。そもそも、生活保護は、申請されたら受理しないと違法になる。
「誰でもすぐ手に取れるところに生活保護の申請書を置いている役所はほとんどなく、いろいろと難くせをつけて『申請』させず、水際で追い返そうとしてくる場合もあります。だからこそ、『申請書を出してください』とハッキリ言うか、チラシの裏だろうと構わないので、自分で用意した申請書を持って行くのがいいでしょう。世帯単位で適用されるため、住所と名前のほか、一緒に住んでいる人の名前を書き、受給の意思があることを書けば充分です」(小久保さん)
申請には不要だが、それと併せて、通帳、印鑑、健康保険証、賃貸借契約書、保険証券など、調査に必要なものをそろえて持って行けば、手続きが早くなる。申請後は原則14日以内、遅くとも30日以内には要否判定が下される。
もう1つ、重要な受給要件に「貯蓄や世帯収入が最低生活費より少ないこと」がある。貯蓄が最低生活費の半額を超えると、その分、最初の保護費が減らされるので、申請前に生活に必要なものを買っておくという裏技がある。
「どれだけ生活が逼迫しているかを窓口で伝えるのが大切です。“生活保護なんて”と抵抗を感じるかたもいると思いますが、とにかく、生活に困っているのなら、申請をためらわないでほしい。家賃滞納しているときなどに転居費用を出してもらえたり、『法テラス』からお金を借りられるほか、破産や離婚などの弁護士費用の返済を免除してもらえる場合もあります」(小久保さん)
もし老後のお金につまずいたからといって、ひとりで思い詰めることはない。救いの道は必ずあるのだから。
※女性セブン2021年6月21日号