運転免許といえば、学生時代など、なるべく20代までに取得する人が多いのではないだろうか。今年3月に警察庁が公表した「運転免許統計」(令和2年版)によると、普通自動車第一種運転免許の新規交付件数は20代までが約92%を占めている(ただし失効新規の交付件数を含む)。となると30~40代で免許を取得する人は、かなりの少数派といえる。いったい、どんな事情から免許取得に踏み切ったのだろうか。実際に30~40代で免許を取得した、また教習所に通っている最中という人たちに話を聞いた。
外資系企業に勤める30代の女性・Aさんは、千葉県在住。約3年前、育児休暇中に託児所付きの教習所に通いはじめ、約4か月で免許取得にこぎつけた。育児だけでも大変なはずなのに、取得を決意したのには切実な理由があった。
「子連れだと、電車移動は周りに気を遣いがちだし、周りの人にとっても迷惑になりかねない。ちょっとの距離でも緊張するのに、これが長距離になったらどうなるのか心配でした。子供がある程度大きくなったら送り迎えをすることもあるだろうし、家族が増えると荷物も多くなる。車があるに越したことはないと思いました。夫は免許を持っているのですが、もう車に10年以上乗っておらず、運転に苦手意識があるようなので、私がどうにかするしかないと覚悟を決めました」
実際に教習所に通った感想は、「意外にママに優しい」だったそうだ。
「やっぱり若い人が多いのですが、その教習所はママ専用プランがあったんです。保育士さんがいる託児所を無料で利用できたので、安心して通えました。教官も理解があって、急なスケジュール変更もスムーズに対応してもらいました」(Aさん)
メーカーで働く40代の男性・Bさんは現在、都内の教習所に通っている真っ最中。神奈川県に住む70代の両親の介護を見越して、運転免許を取得することを決めたという。
「きっかけは、父親がぎっくり腰になって一時的に動けなくなったことでした。同居する母親はひざと腰が悪いので思うようにサポートできず、一人っ子の私が駆り出されました。それ以来、介護が気になり出して……。会社の先輩からも、病院への付き添いなどは、車があったほうが便利だと言われました。取得するなら、今しかないと思ったんです」(Bさん)