人生100年時代。定年を迎えた後も、まだまだ新たに学ぶ時間と活力は残されている。実際に、50代や60代から勉強を始め、難関試験に合格する人も少なくない。定年退職後に勉強を始め、弁護士になった男性にその極意を聞いた。
見た目はこの道何十年のベテラン。だが、実は弁護士歴6年の“若手”である吉村哲夫さん(71才)。弁護士になる前は、福岡市役所に勤める公務員だった。
「昭和49年に九州大学法学部を出たものの、当時は学生運動全盛期で、まともに授業なんて受けられませんでした。司法試験も学生の頃に一度受けましたが、箸にも棒にもかからず、それ以来、六法全書を開いたこともありませんでした」(吉村さん・以下同)
福岡市の職員時代は1995年の「第18回 夏季ユニバシアード」や2001年の「世界水泳選手権」(いずれも福岡市開催)の事務局長を務め、数々の国際事業に携わった。
「必要に迫られて英語を勉強しましたが、そのときに強く実感したのが、“勉強は体系的にするものではない、飛び込みでいくものだ”ということです。
韓流スターが話していることを理解したいという目的でファンの女性が韓国語を習い始め、みるみるうちに上達したという話をよく聞きますが、まさにそれです。何でもいいから『これを理解したい』という“強い思い”をきっかけに勉強を始めれば続くんです。逆に、興味がないことは続かないし、頭にも入ってきません」
ヒントとなったのは、経済学者・野口悠紀雄さんのベストセラー『「超」勉強法』(講談社)だ。
「参考書でも、パラパラめくって気になったところから始めるのがいい。ぼくは適当に開いたところを勉強するということも多かったですね。わからない単語が出てくるのは当然なので、それをまず調べる。何でもいいから、とにかく手をつける。野口さんはそれを『落下傘型勉強法』と言っていますが、どこかに落下しないと始まらないんです」
まず興味を持ったことから着手する。そして、五感をフル活用することを何より大切にする。
「書いて、口に出して読んで、耳で聴いて覚えるのが鉄則。ぼくは大学院受験のときは、カセットテープにテキストの内容を自分で吹き込んで、それを通勤の電車の中などで聴いて覚えました。
いまはスマホで便利な機能があるから、それを活用してもいいですね。読むのが面倒なら、スマホの音声機能を使って読み上げてもらって覚えるのもいい。スマホの拡大機能を使えば、本も比較的楽に読めます。何事も年のせいにしないで、工夫して勉強するのが大事だと思います」